現場の想いを汲み取り、必要な人に届けられる記事の大切さ
建築士の資格を取得しながらも、ライターをする中で、ただリフォーム情報を伝えるだけでは良質な問い合わせを獲得できないと肌で感じています。
というのも、リフォームのプランニングから契約にいたるまでのプロセスと、記事を読んで問い合わせしてみたいと感じる心理や行動はとても似ていて、リフォームを経験してきたからこそ、記事の物足りなさを感じ、日々葛藤しています。
リフォームには、自分たちの暮らしをどうしたいか、どんな家にしたいかと考えて、その先にある暮らしに期待感を持って工務店さんに依頼し、信頼できる工務店さんと一緒に作り上げていく一連のストーリーがありますよね。
これまで経験してきた中でのお客さまとの会話だったり、身近な人のリフォーム体験を聞いたりしても、その過程にはたいてい現場でしかわからない想いや、心が動くような出来事が含まれていました。
例えば、その人らしい価値観やライフスタイルに基づいた、こだわりのプランや、憧れていたインテリアに統一した、家づくりの喜びがわかるストーリー。
実際のプランニングやリフォーム後の暮らしにわくわくするように、記事にもお客さまが思わずリフォームしたくなるような「心が動く」要素が求められています。
出来上がったデザインを見ているだけではわからない、なぜこのプランにしたのか、どうしてこの素材を選んだのかといった具体的なエピソード、その人らしさのあるオリジナルで個性的な要素を見つけたら、わくわくして、伝えたくなります。
インテリアや建材などの一般的な情報を網羅するだけではなく、この工務店さんだからこそリフォームをお願いしたいと思うような強みや魅力、現場の想いやエピソードが想像できる記事を、建築士ライターとして作成したいのです。
ライター自身も勘違いしやすい、現場の想いやエピソードを記事にするむずかしさ
アンビリカルのライターとして仕事をしていく中で、いくつか教わったことがあります。
1)想いを伝える記事というと、取材した想いをそのまま記事にすると勘違いしてしまいがちですが、インテリアのプランニングでも同じように、ただお客さまの要望をありのまま叶えることが正解ではないのです
2)リフォームするお客さまは、自分の叶えたい理想の空間をとにかく想いのたけ伝えて、それをまるっと汲み取ってくれて、ちょうど良いバランスで思いつきもしないプランとして提案してくれることを望んでいます
3)記事も同じで、ただヒアリングで得た強みを並べて、文章として綺麗に整えることが正解でなくて、その背景にある想いや、『言葉にしていない本当に得たい何か』を文章として形にしてもらいたいから依頼いただいているのです
家づくりの話をする時、お客さまが困っていることは何か、本当に望んでいることは何かを汲み取って、やっと見えてくるものがあると感じた経験が何度かあるので、ライティングも同様との話は、とても核心をついていると感じました。
一方的に情報を伝える記事や、自分が書きたいことばかり並べる記事にならないように、常に意識しておきたいと思っています。
とはいえ、言葉にしていない何かを汲み取るのは難しく、ライター自身のこれまでの経験や考える力が必要です。
毎回、記事にするために、何度も事例を確認し、想像力をフルに働かせ、過去の経験を頭の中から引っ張り出し、気になったことをじっくりリサーチし、まずは自分自身が共感し、「なるほど、いいよね」と腑に落ちるところを探していますが、それだけではありません。
完成した記事は、クライアントさまのサービスを利用するユーザーにとって付加価値があるのか、共感できる内容になっているのかの厳しいチェックが入ります。
そこでまた本当にこの記事はこれでいいのか、クライアントさまの集客の役に立つのだろうか、思わずリフォームしたくなるだろうか、と私自身がもう一度深く考え、やっとの思いで納得のいく形になります。
その結果、例えば「アンティークが似合う自然素材のリフォーム」や「季節ごとの移ろいを感じるインテリアスタイル」といった、ライフスタイルや価値観を含んだリフォーム記事になり、クライアントさまから「他では難しかったライフスタイルに沿った記事を制作してもらえる」「問い合わせの質が変わった」とのお声を聞き、喜んでいただけたと実感するのです。
ペルソナマーケティングで、ニーズの本質に迫る
リフォームへの想いを汲み取るには、ニーズの本質に目を向ける必要があり、年齢や住まい、性別等の表面的な情報ではなく、実際にサービスを利用するお客さまを想定しています。
例えば、入居してしばらくたち、間取りや設備に「もう少しここがこうなっていたら」と気づかれたお客さまがリフォームに至るまでに、心理的な面やライフスタイルの価値観などから、どのようなきっかけや気持ちの変化があるのでしょうか。
部屋が細かく区切られたLDK、キッチン設備も古く、ママ友を呼ぶのには少しためらいがあるという話もよく聞きますが、子供が小学生になってくると、お友達を家に呼びたいといった会話が日常的に出てきて、それがきっかけになることがあります。
学校行事の情報交換や連絡など、ママ友同士のつながりも必要で「この際、ホームパーティができるようなLDKにしたい」と考えるお客さまを思い浮かべながら、どんなリフォームだと満足されるだろうと具体的なリフォーム内容を想像します。
思い切って間取りを変更するフルリノベーションをして、ゆったり広くなったLDKにすると、ママ友や子供たちを呼んでホームパーティーができ、さらにお気に入りのインテリアだと毎日の暮らしも楽しくなりますよね。
工夫した動線や間取りのおかげでパーティーの準備も後片付けもラクになったなど、自分自身の過去の経験も含め、憧れの暮らしやエピソードを挟むとリアルです。
リフォームをして毎日の暮らしが楽しくなったと丁寧に伝えることが、工務店さまへのお問い合わせにつながるのではないかと考えて、記事に向かい合っています。
この記事のライターさん
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大学院での研究テーマは日本建築。二級建築士。卒業後、老舗住設メーカーに就職、多数の物件を抱えて奔走する多忙な日を送ったことも。
建築なら住宅、カフェ、美術館などの現代建築、日本建築からハリーポッターのホグワーツ城まで、好きの範囲は広い。
子育て中に、SNSなどの発信に興味を持ち、現在はライターに。